スレチガイ アンノウン
05. 少女の不安
「紅夕。」
「すまん、。委員会が延びてさ。」
校門で紅夕を待っていると、紅夕は急いで来たみたいだった。
息切れしてる・・・
「そんなに急がなくてもよかったのに。」
「女性は待たせるなって言うのが父さんの遺言なんだ。」
「紅夕のお父さん、生きてるじゃない。」
しんみりしてみせる紅夕に思わず突っ込んでしまった。
行くか、と紅夕が言うと二人で並んで歩き出した。
「今日は、何かあるの?」
「そうだな。ビデオでも借りて家に来るか?」
「本当?見たいビデオがあったの!」
映画館でやっている間に行けなかった事を話すと、じゃあ決定、と笑った。
バスに乗ると席が一人しか開いていなくて二人で立とうとすると座るように言われる。
「ありがとう。」
「レディーを立たせたら失礼だからな。」
「これもお父さんの遺言?」
クスッと笑えば、いや、と否定される。
「これは祖父さんの遺言。」
「お祖父さんだって一緒に住んでるでしょ・・・」
「一応ね。」
レンタルビデオ屋につくと私の探していたものがあった。
コレ、と紅夕に見せると、面白そうじゃん、という返事が返ってきた。
「ジョニー・デップ、すきだったっけ?」
「この作家の本が好きなの。」
いい男だとは思うけど、と付け足す。
くく、と笑うとヒョイとビデオを取り上げられた。
「紅夕?」
「他になんかある?」
「そうじゃなくて。自分で払うよ?」
「いいって、俺知り合いが居るから安くしてもらえるし。」
どうしても私に払わせないつもりだ。
一度決めたら滅多に意見を変えないのは昔から。
私は、溜息をついて、お願いします、と甘える事にした。
そして紅夕の家で映画を見ると、紅夕のお母さんにご飯を一緒に、と言われた。
もちろん家族ぐるみの付き合いをしている私達だから断らなかった。
食事の後も紅夕の部屋で紅夕が借りたビデオをつけた。
「なあ、。」
「なぁに?」
「明日、本当にいいのか?」
何故か、なんていう必要ない。
明日は、亮君の誕生日だから。
「紅夕が気にすることじゃないよ。」
私の言葉に小さな皺が眉間に寄った。
「明日したい事は?」
「特に無いけど・・・」
だって、一番したい事は本人に断られてるようだから。
「じゃあ、明日放課後デートな。映画館に行く。」
なんだか不機嫌な声音。
「紅夕?怒ってる?」
「別に、怒ってない。」
「亮君のせいじゃ、ないから。」
大好きな幼馴染は私を大事にしてくれる。
結構前から、私を応援しながらも少し亮君のことが気に入らない態度を見せた。
この時もそうだと思ってた。
「何で言わないんだよ?」
不機嫌を隠さないまま低い声で紅夕が言った。
言いたいよ、本当はね。
でも、いえない。
「・・・恐いんだよ。」
「・・・・・・」
「私ばっかり好きになってくみたいで、恐いの。」
眉間に皺を寄せて、何が、と視線で問われる。
「ワガママ言って、嫌われたくないの・・・」
眼が熱くなってきて俯いた。
「それでも、時々会えるから、話せるから。このままでいいの・・・」
「・・・」
「嫌われるより、よっぽど・・・」
そっと紅夕に抱きしめられた。
「お前を嫌う奴なんか居ねぇよ。」
「紅夕・・・」
「嫌ってる奴は、お前が可愛くて嫉妬してる醜い奴等ばっかだ。」
優しい暖かい紅夕の腕。
亮君とは違う、暖かいほっとする腕。
「ありがとう、紅夕。」
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