気がついたとき、僕は洞窟の外にいた。さんがいなくて驚いた。でも、玄海さんが、幽助とコエンマと一緒なら平気だと言ったので、少し安心した。
戻ってきた浦飯さんはなぜか髪が伸びていて体に模様が浮かんでいた。雪村さんと抱きしめあった時は、映画のワンシーンのようだった。さんは、その隣でにこにこしていた。彼女には怪我がなかったようで、安心した。そのあと、僕たちはとりあえずと浦飯さんたちが泊ることになったホテルへ向かった。
「御手洗君」
結局、酒だなんだと大騒ぎになった。無理矢理少し飲まされたものの、ターゲットが違う所へ向かってジュースを飲んだ。
「さん」
ベランダに出ていたことに気付いたらしい。彼女の後ろに目をやると、いつの間にか幽助さんたちはリビングで酔いつぶれている。
「大丈夫?幽助に無理矢理飲まされたんじゃない?」
水の入ったコップを差し出された。
「大丈夫。少ししか飲んでないし」
「ごめんね。皆で大騒ぎするの久しぶりだったから」
苦笑する彼女からコップを受け取った。
「ありがとう、さん」
「それ」
突然の単語に僕は首を傾げた。コップのことだろうか、とコップを見てみた。
「私の方が年下なんだし、さんって呼び方じゃないほうがいいな」
「え?」
コップの話ではなかったらしい。
「私、御手洗君って呼んじゃってるけど、御手洗さんの方がよかったかな?」
「い、いや。今のままでもいいんだけど」
困ったような表情から、ぱっと笑顔になった。
「ありがとう。うん、それなら、やっぱりさんじゃないほうがいいな」
「じゃ、じゃあ、ちゃん」
恥ずかしくなって、顔が熱く感じた。ぱっとベランダの下に向けた。遅い時間だから、そこに人はいない。
「御手洗君は、これからどうするの?」
これからのこと。それは僕自身考えていたことだった。
「とりあえず、学校に行くよ」
「そう」
少し下がったトーン。天沼との会話で、学校にいい思いがないことを知っているから、心配してくれてるのかもしれない。
「御手洗君なら、大丈夫だよ」
すとんと心の中に入ってきた。今までの僕とは違う。
「ありがとう」
ふと、あることに気付いた。蟲寄市に住む僕は、明日からもう彼女に会うことはない。それが、すごく残念だった。
「そういえば、御手洗君は最近できたあのテーマパーク行ったことある?」
名前忘れちゃった、という相手の考えていたテーマパークの名前をいうと、それ、と笑った。
「行ったことない」
「じゃあ、今度一緒に行こうよ」
「え」
突然の誘いに驚いた。
「あ、もし嫌じゃなかったら、の話ね!」
慌てて付け足された言葉に、いやなわけがない、と思った。
「い、いやじゃない!行きたい!」
思わず声が大きくなってしまって、びっくりしたような目が僕を見た。頬が熱い。
「よかった」
また会える。それが、とても嬉しかった。
「約束ね」
小指を出してちゃんは笑った。
その柔らかい小指に自分の小指をまいた。
その手は僕の世界を塗り替えた
BACK MENU
UP 05/06/14