−SCENE 03−
−彼女の謎−
「さんの家?」
「何でそんな事?」
「知ってるわけ無いじゃないっすか」
部室で大石は、不二、河村、リョーマの三人の家の事を訊いた。
しかし、三人の答えは否。
「俺は部活でもあんまりはなせないしなぁ・・・」
「もともとおしゃべりじゃないっすからね、先輩」
「でもどうして?」
不二が問うと大石は困ったように、いや、と言葉を濁した。
その時、部室のドアが空いて、菊丸、桃城、乾が入ってきた。
「あー疲れたー!」
「いつもよりメニュー増やされましたもんねー」
最後に入ってきた乾を見て、不二は、そうだ、と言った。
「乾なら知ってるんじゃないかな?」
「そうだね、乾なら知ってそうだよな」
「にゃに、にゃに?何の話〜?」
菊丸は面白い話でもしているのだろうか、と楽しそうに笑った。
大石は、ああ、と不二の意見に頷き問うた。
「乾。さんの家って、どこにあるか知ってるか?」
「の家ぇ〜!?」
何でそんなもの、というように菊丸は目を丸くして口を金魚のようにパクパクさせた。
桃城もその隣で、呆然としている。
「の家?」
「そう。さんの家。僕もタカさんも越前も知らないんだ」
「そんなの俺だって知らないっすよー」
不二の言葉に桃城が笑うと、全員が乾を見て答えを待った。
「住所なら知ってるけど」
「知ってんの!?」
マジかよ、と菊丸は目を丸くした。
「自宅の電話番号と住所、誕生日しかわからないが」
っていうかそれだけ知ってれば充分じゃん、とリョーマは呆れたように呟いた。
「何で知ってるんっすか、乾先輩・・・?」
「学校の資料を調べた」
そこまでしなくても、と思いつつも大石は、本当に、と訊いた。
「ああ。だが妙な事があってな」
「妙なこと?」
不思議そうに大石が聞き返すと、ああ、と乾は頷いた。
「その情報以外は全て隠されているんだ」
「にゃんだよ、それ。」
「普通の生徒のデータは、電話番号、住所、生年月日以外にも、家族構成や今までの学校の情報なども出るんだ」
「へえ〜、そんなのあったんだ」
感心したように菊丸が言った。
「だが、の場合、それがない」
妙だろう?と言った乾に不二達は顔を見合わせた。
「確かに、それは不思議な話だね」
不二が頷くと、部室のドアが開き、海堂が入ってきた。
全員の視線が自分に向き、海堂は眉根を寄せた。
「なんすか・・・?」
「海堂!・・・が知るわけないか・・・」
菊丸が溜息をつくように言うと、桃城が笑った。
「そりゃそーっすよ、先輩。マムシが知ってたら、それこそ不思議ですって!」
「何の話だ?」
ムッとしたように海堂が訊くとリョーマが答えた。
「先輩の話っすよ。あの人の家を知ってる奴がいるかどうか」
リョーマの説明に海堂は一瞬ドキッとしたが、表には出さず、眉を寄せて自分の着替えを始めた。
「それにしても家族構成とかが学校で見つからないってのも変な話だね」
「タカさんの言う通り、学校の資料で全然見つからないって言うのは不思議だね」
「っていうか、何でそんな話になったんすか?」
不二の言葉に、桃城が問い掛けた。
「いや、昨日ちょっと気になって」
大石の答えに全員が、確かに知らないな、と心の中で思った。
もちろん、海堂は知っているのだが、河村の言った家族構成の話を不思議に思った。
そして自分が行った時に家族が居るような雰囲気は無かった、と気付く。
「まあ、謎の多い人っすからね」
リョーマはそう言うと、それじゃあお先っす、と部室を出て行った。
それに続いて次々と全員が家路についた。
ただ一人、疑問が次々と浮かんだ海堂を除いては。
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fix 02/18/14