−SCENE 04−
−二度目の訪問−
お疲れ様でした、と会議を済ませたは、家に帰ったら作詞でもしようか、と考えていた。
「今日、奏一さん遅いって言ってたしな」
晩御飯いらない、と数分前に電話がかかってきた事を思い出しながらつぶやいた。
自分の家まで後少しの距離になり、鞄からはカギを取り出した。
そして、ふと顔をあげて驚く。
「・・・海堂さん?」
玄関の前で家を見上げるように立ち止まっている海堂が居た
トレーニング中だったのだろうか、と運動着を着ている海堂を見ては思った。
見つめていた家の主が現れたことに気付き、動揺したように驚いた。
「・・・!」
は、何故そんなに驚く、と思いながらも、はい、と答えた。
「何かありましたか?」
「いや・・・・・・」
何かあったのか、という質問に海堂は困った。
別に何かが起きた訳ではないが、部室でのレギュラー達の会話が気になったのだ。
説明しようの無い理由に言葉に詰まった海堂を見て、は首を傾げた。
「どうかしたんですか?」
真っ直ぐと自分を見る相手がいつもと違う姿に気付いた、海堂は目をそらした。
「いや・・・・・・」
意味不明な相手の言動には眉を寄せ、困ったような息を吐いた。
そして、自分の家へ一歩近づいた。
「あ、・・・」
「どうぞ」
あっさりと告げられた一言に海堂は驚いた。
用が無いなら帰れ、とまでは行かないが、まさか家に入れられるとは思わなかった。お邪魔します、と小さく呟いて玄関の中に入った。は自分の靴をそろえるとリビングルームに先に歩き出した。以前入ったことのある部屋に海堂はゆっくりと入っていった。
「緑茶、紅茶、コーヒー。炭酸類はありません」
「緑茶・・・」
「わかりました」
前回来た時と同じ言葉を交わし、海堂はまた部屋を見回した。
そして、以前と同じようにサイドテーブルにいくつか倒されたものがあった。
「写真立て・・・?」
何故倒してあるのだろうか、と首を傾げたところに、がキッチンから戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとう・・・」
海堂が湯のみを受け取るとしばらく沈黙が続いた。
「それで?」
何か用があったから来たのだろう、と考えていたが口を開いた。
「何か?」
「いや・・・」
「さっきからそればっかりですね。何も無くて来たわけではないでしょう?」
怪訝な顔で言うに海堂は困った。
「何か部活でありましたか?」
何も言わない相手には首を傾げた。
一体何があったのだろうか、と。
「は・・・」
「・・・?」
俯いたまま海堂が口を開いた。
「いや・・・この間借りた服を、いつ返そうかと思って・・・」
違うだろう、と言葉を摩り替えてしまった自分に突っ込んでしまった海堂には、ああ、と頷いた。
「気にしないでください。替わりならまだ在りますから」
海堂は、そう答えたが何だかいつもと違うように見えた。
僅かだが、困ったような、悲しそうな、切なそうな表情。
「本当に気にしないで下さい」
「わかった」
すると電話が突然鳴り、は立ち上がって電話に出た。
海堂はそれを見送ると、溜息を吐いた。訊きたいが、それ以上は訊いてはいけない。そう感じた自分に頭を悩ませた。
「おかわりしますか?」
突然戻ってきたが後ろに立っていて海堂は内心驚きながらも、いやいい、と答えた。
「そろそろ、帰る、からな・・・」
「そうですか」
気をつけてくださいね、とが言うとまた電話が鳴った。そして、困ったように眉を寄せて、すいません、と呟いた。
海堂は気にせずそのまま帰ろうとした。その時、電話僅かに聞こえたの声に少し耳を傾けた。
「だから、その話は今度にしましょう」
困ったような声に興味をひかれた海堂は思わず立ち止まった。
「明日?明日はテニス部に出るの。わがまま言わないで、子供じゃないんだから」
は溜息を吐いて、眉間を抑えた。
「今晩も無理。たまには休ませて」
その後に続いた、それじゃあね、と言う言葉に海堂はハッとして急いで玄関で靴を履くと、家を出た。
「もう帰っちゃったのか・・・」
は少し玄関を驚いた様に見た後、二つのカップを洗い始めた。
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fix 02/18/14