−SCENE 06−

−雑誌の男−




部活の時間に一つの教室にスミレに集められた、乾、大石。
次の対戦の話を決める為に集められた。そして四人でオーダーを決める相談を始めた。

「城西湘南中は、有名ですか?」

まあね、と答えたのはスミレではなく乾だった。

「色々な雑誌でインタビューにも答えてるみたいだしな」
「インタビュー?」

眉を寄せたに乾は頷いた。

「それが海堂さんと乾さんがダブルスをやるべきではない理由になるんですか?」

大石を見ると困ったような顔でに肩を竦めた。

「なるさ」

ほら、と乾が手に持っていた雑誌を見せた。
中の記事にはシングルスをやるならば海堂の相手になるだろうと思われる少年のインタビュー。

「・・・だたの挑発じゃないですか」

ダラダラと海堂を見下したような言葉の並ぶそれを、くだらない、と思ったとは逆に、スミレは乾の思った通り、挑発にのった。

!海堂はシングルスで行くよ!」
「スミレさん・・・」

あきれて物が言えないような顔では頭を抱えた。
にやりと笑った乾を大石とは呆れたように見た。
そして、オーダーは決まり、スミレが教室を出て行くと三人は帰る支度を始めた。

「いい方法だろう?海堂がシングルスになるには」

の背中に向かって乾は笑った。
大石は困ったように二人の様子を見た。

「そうですね。それが何か?」
「君は腹が立たなかったのか?海堂が馬鹿にされたのに?」
「馬鹿にされたって・・・大袈裟な」

呆れたような声で答えたに乾は、そうかな、ととぼけたように言った。
そして、そういえば、と続けた。

「この雑誌、若人だけじゃないんだ」
「だけじゃないって・・・?」

何かを企んでいるような様子の乾に大石は不安そうな顔でに目を向けた。
はまるで興味がないようにカバンの口を閉めた。

「城西湘南中のコーチ、華村葵のインタビューも載ってる」
「・・・それが何か?」

一瞬、覚えのある名前に反応しそうになったは、なんとか冷静に返した。
まるで何かを探るような乾を真っ直ぐ見る。

「いや、別に。でも、興味深い人だと思わないか?」

乾はてっきり否定するだろうと思っていた。
しばらく一緒にいて、が自分のことをあまり語らない事も気付いていたからだ。
指で眼鏡を押し上げた乾と数秒見つめあったの答えは、乾の質問の答えにはなってはいなかった。。

「乾さんが言うなら、そうなんでしょうね」
「俺は君の意見を訊いてるんだけどね」

少し苦笑してみせた乾には、私の意見は今言いましたよ、と冷たく返して、部屋を出た。
やれやれ、と笑った乾に大石は首を傾げた。

「乾・・・?」
「さすがに、簡単には教えてはもらえないみたいだな」





05−雑誌の女  07−信頼


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fix 02/18/14