−SCENE 08−
−挑発−
「あんな挑発に乗るなんて」
コートの中で双子のいう言葉に一々反応する桃城をは呆れたように見た。
まるでゲームを気にしないかのように続けられる洋平と浩平は、自分たちの学校生活の話を続けた。その挑発に桃城は更に怒り、ダブルスとして勝手な行動を始めてしまった。冷静になれない桃城と冷静な乾が段々と負けていくその試合を見ていると、少し離れた所で騒ぎ声が聞こえ出した。怒鳴りあう声は、普段は仲のいい一年生トリオの内、二人からだった。
「お、落ち着いてよ〜!」
水野と堀尾の間に入った加藤は困ったように情けない声を出した。
その様子には、試合中に、と呆れたように息を吐いて、動いた。
「落ち着いてって〜!」
「落ち着けって言われて落ち着けるかよ!!」
その言葉にコートの中の桃城が堀尾達を見た。
「なら、強いテニスプレーヤーにはなれませんね」
ぎゃーぎゃー叫ぶ中で落ち着いた声が止めた。
「先輩!」
加藤が叫ぶと、げ、と小さな声で堀尾は叫ぶのをやめた。
「簡単に相手の挑発に乗って――」
その言葉にハッとしたように桃城は、を見た。
堀尾達ではなく、青い瞳は真っ直ぐと桃城を見ていた。
「――自分で冷静になれない選手は強くはなれませんよ」
その言葉に、う゛、と言い合っていた堀尾と水野は唸った。
真っ直ぐと見つめる目に桃城は、自身の行動を改める為、大きく息を吸って吐いた。
「乾先輩」
すいませんでした、と謝った桃城は、気合を入れなおして試合を再開させた。
まるで別人のようにダブルスとしての才能を見せた桃城達が勝つかと思われた。しかし、タイムの間に誤って乾のドリンクを桃城が飲んだため、青学はまさかの棄権に終わった。
「管理能力を疑いますねぇ」
笑顔で嫌味を言う華村にスミレはムッとしたが、スミレさん、との声に動きを止めた。
「そんな挑発にのらないで下さい」
第一彼女の言っている事はもっともなのだけど、と思いつつ止めたは華村を見た。ニヤリと笑った相手は、冷静ね、と頭の中で楽しそうに呟いていた。あってしまった視線には眉を寄せ、その場から歩き出した。
「え、先輩?どこ行くんですか?」
慌てて訊いた加藤の言葉をは、飲み物を買いに行ってきます、と返した。
コートから少し離れた自動販売機では烏龍茶を買った。
すると傍のベンチから聞き覚えのある声が聞こえた。
「南次郎・・・?」
咄嗟に呟いた名前は、確かにその声の主だった。
「ん?おお、」
「え、って・・・!」
のんびりと、よっ、と片手を上げた人物の隣で、驚いたように男は南次郎とを交互に見た。
「季楽プロ・・・」
「君の姪の・・・!」
「・・・どうも」
小さく頭を下げて挨拶するを見て、南次郎は笑った。
「コイツ見てみろよ、泰造」
は突然の話に首をかしげながら南次郎を見た。
「ガキなんてのは、思い通りにいかねーもんだぜ?」
南次郎の言葉をは静かに聞いていた。
「俺の言う事一つ聞きゃあしねえ」
「私どころか、貴方の息子だって思い通りにならないでしょう?」
うるせー、とに言うと南次郎はまた笑った。
「ガキなんてのは、てめーのおもちゃでいいんだよ」
実に南次郎らしい言葉には小さく笑みを零した。
「お互い苦労するな、泰造」
はい、と小さく返した季楽には微笑んだ。
「季楽さんのお子さんなら、一度やめても、きっとまたテニスをやるでしょう」
驚いた様に季楽は顔を上げてを見た。
が、驚きの表情はすぐに嬉しそうなものに変わった。
「ありがとう」
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fix 02/18/14